2023.02.28
M&Aコラム
M&Aに失敗しないための手順と必要な書類まとめ
M&Aを無事成功へ導くためには確実な準備が大切になります。
特に書類作成に関しては、M&Aの段階ごとに様々な書類が必要になります。
初めてのM&Aを考えている会社にとっては書類や情報をまとめるだけでも一苦労です。
ギリギリになって「あれがない」と慌てるような事態は避けたいところです。
そこで、本記事ではM&Aに必要な書類について網羅的に紹介していきます。
いざという時に困らないようにぜひチェックしてみてください。
1.専門家やM&A仲介業者とのやり取りで必要な書類
M&Aの実行には複雑なプロセスを踏んでいく必要があるため、専門家やM&A仲介業者に協力を求めることが必須となります。
相手企業とのマッチング、デューデリジェンス、各方面との作業など様々な仕事を任せることになります。
よって、まずは契約に必要な書類を用意しないといけません。
この段階で必要な書類は以下の通りです。
- アドバイザリー契約書
- 秘密保持契約書
- ロングリストとショートリスト
- アドバイザリー契約書
M&Aのサポートを専門家へ依頼する際に必要となります。
記入する内容は主に「依頼する業務の範囲」「業務を依頼する場合に「必要な費用」「免責事項」などがあります。
アドバイザリー契約書を用意しておけば、後から「この業務は自社でやるべきなのか、それともお任せしていいのか」と慌てる必要がありません。
契約書を見るだけですぐ判断することができるので、トラブル防止につながります。
・秘密保持契約書
自社の機密情報を第三者などに漏洩しないことを約束するために必要となります。
例えば、契約した専門家が取引先に自社がM&Aを実施する予定であることを漏らしてしまった場合、取引先などからの信用を失ってしまう可能性があります。
慎重に業務を行ってもらうために重要な書類となるので、必ず締結をします。
なお、秘密保持に関する内容は先ほどの「アドバイザリー契約書」に記載する場合もあります。
・ロングリストとショートリスト
ロングリストとは
「業種や売買金額などの一定な条件下でM&Aの対象候補となる企業をピックアップしたリスト」
のことを指しています。
そしてショートリストとは
「ロングリストの中からさらに条件を細かくして数社までに絞ったリスト」
のことを指します。
M&Aを進めるうえでは両方作成する必要があります。
準備する手順は以下の通りです。
1.リストアップの基準を定める
→単にM&Aを希望している企業を探すのではなく、企業規模・業種・買収価格などから基準を決めましょう。
2.企業情報を収集してロングリストを作成する
→データベースや専門家との相談を通じ、1の基準に従いながらロングリストを作成しましょう。
多い場合は100社ほどリストアップすることもあります。
3.より細かい条件を設定してショートリストを作成する
→ロングリストよりも細かい条件を設定してからショートリストを作成しましょう。
条件設定で重要なのは「M&Aの目的や方向性を決めること」です。
たとえば、販路の確保を目的としている場合はネームバリューがあり店舗の多い企業に絞り込むというイメージです。
自社の目的・方向性を明確にすることでより良いM&Aの実施が可能となります。
M&Aの成功には専門家の協力が必須です。
専門家と密に相談し、自社の悩みや希望を共有し、慎重にロングリスト・ショートリストを作成するように心がけましょう。
2.M&A対象企業の選定と打診で必要な書類
M&Aに関するサポートに必要な契約が完了したら、実際の業務が始まっていきます。
M&Aの相手候補となる企業には自社のことを知ってもらわなければなりません。
そこで自社の情報を段階的に開示していくために書類を用意しておく必要があります。
具体的には次の3つです。
・ノンネームシート
・秘密保持契約書
・企業概要書
ノンネームシート
ノンネームシートとは
「M&Aに関するコンタクトを取る際に譲渡企業が譲受企業に提出する書類」
のことを指しています。
譲渡企業の名前を特定されない程度に「事業内容」「売上・利益」「譲渡希望額」などが記載されています。
この段階では秘密保持契約を行っていないため情報が漏洩する可能性があります。
そんな事態を防ぐために企業名を伏せています。
・秘密保持契約書
ノンネームシートから興味を持っていただいた企業と、交渉に入る前に秘密保持契約を結びます。
その際に用意するのが秘密保持契約書です。
会社の情報漏洩でトラブルが起きないよう、M&Aの専門家と交わした時と同じく必須のものです。
特に、交渉の末M&A契約に至らなかった場合でも情報が外に漏れてしまうと取引先などに迷惑をかけてしまうので注意しましょう。
・企業概要書
ノンネームシートで興味を持っていただき、秘密保持契約を交わしたら後に具体的な情報を企業概要書で開示し検討段階に入ります。
企業概要書には「譲渡企業の名称・所在地」「組織形態・従業員数」「取得している許認可名」「知的財産権の有無」「事業内容・財務状況」「サービス・商品の売上や客単価」「販売戦略や市場を取り巻く状況」など非常に多岐にわたります。
ノンネームシートで記載したよりももちろん豊富に項目があり、より詳細な情報が分かるようになっています。
いわゆる自社の”履歴書”のようなものです。
相手企業はこの企業概要書を基に自社の評価を下します。
この企業概要書ではもちろん、自社とM&A契約を交わすメリットをアピールすることが大切ですが、自社にとって不都合なことも正直に書くよう注意しましょう。
不都合な面を隠してしまうとM&A実行後のトラブルを招き、信頼関係を失いかねません。
3.相手企業とM&Aに関する交渉を行う際に必要な書類
選定と打診の段階で、お互いM&Aに対して前向きな姿勢であれば本格的な交渉に入ります。
用意する書類もさらに専門的なものが多くなっていくので専門家との調整が必要になってくるでしょう。
用意すべき書類は以下の通りです。
・意向表明書
・基本合意書
・デューデリジェンスにともなう書類一式
・意向表明書
意向表明書とは、
「お互いの企業がM&Aに対して前向きであることを確認できた場合に、買い手企業が売り手企業に提出する書類」
のことを指しています。
記載内容は、「売買金額」「M&A実行のスケジュール」「M&Aの目的」「M&Aの手法」「M&A後の経営方針」「デューデリジェンスの概要」など多岐にわたります。
この書類は提出が必須なものではなく、ただちに法的拘束力が発生するものでもありません。
今後の交渉を円滑に行うために役立つので、念のため準備しておくべきものです。
・基本合意書
基本合意書とは、
「両社がM&Aの実行に同意した場合に作成する、同意事項・守秘義務・M&A内容などをままとめた書類」
のことを指しています。
こちらも独占交渉権など一部の条項をのぞいて法的拘束力はありません。
意向表明書との違いが少し分かりにくいかもしれませんが、意向表明書はあくまで買い手がM&Aを希望していることを伝えるための書類です。
一方で、基本合意書は契約内容について買い手と売り手の両方が同意したことを確認する意味を持っています。
・デューデリジェンスにともなう書類一式
デューデリジェンスとは、
「基本合意契約後に、買い手企業が売り手企業を”本当に買収するにふさわしい企業か検証する取り組み」
のことを指しています。
M&Aの成功のためにはシナジーやリスクの把握が非常に重要です。
これは、せっかくM&Aが完了したのに後から簿外債務が発覚して思わぬ損失が生まれてしまう、などといったトラブルを防ぐためです。
あらかじめ表立って注目されない数字以外の情報なども収集しておくことでトラブルを回避できる可能性は大いに高まります。
デューデリジェンスには様々な種類があり、主に「法務デューデリジェンス」「財務デューデリジェンス」「事業デューデリジェンス」「人事デューデリジェンス」などが挙げられます。
これらの取り組みに対して売り手企業は以下のような書類を提示する必要があります。
・決算書、確定申告書(3期分)
・商業登記簿謄本
・株主総会議事録、取締役会議事録
・定款
・株主名簿
・会社案内
・組織図
・従業員名簿
・雇用契約書
・就業規則や退職金規定等の規定類
・月次試算表
・経営計画書
・固定資産台帳
・固定資産税納税通知
・不動産売買契約書
・不動産登記簿謄本
・不動産の図面等、その他不動産に関する資料一式
・月次試算表
・取引先との契約書一式
・リース契約書一式
・保険契約書一式
・知的財産に関する資料
・過去の紛争に関する資料
・行政許認可証一式
・行政指導に関する資料
このように多数の書類が必要となるので、あらかじめ整理しておくことが重要です。
さらに、他に買い手企業が要望した場合に必要となる書類も存在します。
なお、みどり財産コンサルタンツでも財務デューデリジェンス、税務デューデリジェンスのご支援をおこなっております。お気軽にお問い合わせくださいませ。
4.最終契約とクロージングで必要な書類
デューデリジェンスを経て売り手側と買い手側の双方で同意がされたら、いよいよ最終段階に移ります。
必要となる書類は、株式譲渡を実行する場合なら「株式譲渡契約書」、事業譲渡を行う場合なら「事業譲渡契約書」を交わします。
ちなみに、株式譲渡と事業譲渡の違いは
「株式譲渡は対象会社発行の株式を譲り受けることにより対象会社そのものを取得するものであるのに対し、事業譲渡は対象会社の持つ事業またはその一部を取得するもの」
となります。
この「株式譲渡契約書」と「事業譲渡契約書」の2種類を合わせて「最終契約書」と呼びます。
検討段階で交わした基本合意書などには法的拘束力はありませんでしたが、最終契約書には法的拘束力があります。
契約締結後に不備や不履行が発覚すれば罰則を受けることになるので注意が必要です。
最終契約書に記載すべき条項として、主に3つの項目があります。
①アーンアウト条項
→アーンアウト条項とは、買い手側に対して追加料金の支払いを義務付けるものです。
これはM&A実行後、売り手側に経営に携わってもらい、結果に応じて買い手側が報酬を支払うという約束です。
買い手側もある程度コストを抑えてM&Aを実行できるので、お互いに取引価格に関するトラブルを防ぐことができます。
②エスクロー条項
→エスクロー条項とは、売り手側に補償責任が生じた場合に備えて第三者に譲渡代金の保管を依頼することを定めるものです。
M&A後に損害賠償が発生しても売り手側が支払いできないとなると買い手側も不安が拭えません。
そこで、売り手側があらかじめ第三者に資金を預けておけば買い手側は安心して取引ができます。
一定期間が過ぎて何も問題がなければ、預けたお金は売り手側に戻るようになっています。
③表明保証
→表明保証とは、売り手が買い手に対して、最終契約書に記載される財務・法務などの一定の事項が正確な内容であることを保証するものです。
M&Aの検討段階でデューデリジェンスを行い企業の情報は収集しているのですが、100%把握することはやはり不可能です。
調査外のことは会社が提出する資料を信頼するしかありません。
そこで、虚偽の内容ではないということを証明することでフェアなM&Aを実現します。
最終契約書の締結が済めば代金の受け渡し・経営権の移転などのクロージング業務に移行します。
5.まとめ
手続きの順番通りに必要な書類をまとめてきました。
✔︎専門家やM&A仲介業者とのやり取りで必要な書類
・アドバイザリー契約書
・秘密保持契約書
・ロングリストとショートリスト
↓
✔︎M&A対象企業の選定と打診で必要な書類
・ノンネームシート
・秘密保持契約書
・企業概要書
↓
✔︎相手企業とM&Aに関する交渉を行う際に必要な書類
・意向表明書
・基本合意書
・デューデリジェンスにともなう書類一式
↓
✔︎最終契約とクロージングで必要な書類
・最終契約書
M&Aにおける書類作成には王道の失敗パターンが2つあります。
1つ目がM&Aの目的が不明確であることです。
M&Aを実行する際は以下の点を明確にしておくことで円滑に話を進めることが可能になります。
・中長期のゴール
・M&Aを行う理由
・M&A後の売り手企業の位置付け
・M&A獲得後の効果・シナジー
この4点を特に丁寧に決めておくように注意しましょう。
2つ目は企業分析が曖昧になってしまうことです。
特に売り手企業の情報を見逃したりすることで思わぬ借金を背負うことになったり、シナジー効果が想像以上に得られないという事態になりかねません。
M&Aの候補となる企業に関する分析は多少のコストをかけてでも実践すべきです。
M&Aは数ヶ月から1年以上というスパンで実行されるもので、サクッと簡単に終わるようなものではありません。
そのため、準備も計画的に時間をかけて行う必要があります。
実際に用意すべき書類は膨大で複雑です。
そのため社内で全ての準備を済まそうとするのは困難を極めますし、トラブルの発生確率が高くなるでしょう。
もしM&Aの実行を考えている経営者の方はM&Aの専門家に相談してみるのが最善の手段です。
専門家に相談すれば大幅な時間をカットして準備が整うでしょう。
最後に
もしM&Aに関して相談の機会を希望される方はこちらの「M&A Pass」がオススメです。
↓
M&Aにおける充実したサポートを基本合意まで
無料で受けられるマッチングサイトはこちら▶️
M&A Passは、審査を通過した企業のみが掲載されている完全審査制M&Aマッチングサイトです。
全工程をオンラインのみで完結するサイトとは違い、マッチング後はファイナンシャルアドバイザーがリアルでサポート。
初めてのM&Aに不安を感じる経営者の近くで伴走します。
会員登録やサービス利用は完全無料です。
まずは情報収集の一環として、ぜひM&A Passへの会員登録をお願いいたします。
売り手の会員登録はこちら
買い手の会員登録はこちら
登録方法のサポートが必要な方はお気軽にお電話くださいませ。
M&A Passサポート窓口 0120-984-985(平日9:00〜17:30)