2022.12.20
M&Aコラム
事業承継のためのM&Aとは?
経営者の悩みの一つである事業承継。
誰に受け継いだらいいか、どのタイミングで受け継ぐべきかなど課題は山積みですよね。
事業承継について悩んでいる経営者はとても多いのが現状になります。
元気な経営者は、引退はまだまだ先だからといって油断していることもよく見受けられます。
事業承継には数年から十数年と長く時間がかかることが多いため、仮にまだ先の話だと思っていても情報収集が必須になります。
そこで今回は事業承継のためのM&Aをテーマに、それぞれの単語の意味や違い、メリットとデメリットなどについてご紹介いたします。
事業承継とは
事業承継とは、「会社の経営を現経営者から後継者に引き継ぐこと」を指します。
経営者にとって事業承継は一番大きな最後の仕事と言っても過言でないくらい大事なことになります。
近年では後継者不足や、誰に引き継ぐかは深刻な経営課題でもあるため事業承継について知り、より良い選択を取れるように準備しましょう。
まずは事業承継の種類からご説明します。
事業承継には3つの種類がありそれぞれ詳しく解説すると以下のようになります。
– 親族内承継
親族内承継は親族に事業を引き継ぐことです。
メリットは承継時期や株式などについて柔軟に決められるところがあります。
デメリットとしては後継者候補が複数人いる場合の決定の難しさや、後継者の経営能力や資質については別問題という点が挙げられます。
– 親族外承継
親族外承継は親族ではない役員などの従業員に事業を引き継ぐこと。
メリットは実務の引き継ぎがスムーズな点や従業員からの賛同を得やすい点が挙げられます。
デメリットとしては親族内株主の理解を得られない可能性がある点や買取資金が確保できない、などという点が挙げられます。
– M&A
M&Aは親族や従業員ではない、第三者に会社の経営を引き継ぐこと。
M&Aのメリットやデメリットについては後ほど詳しく記載いたします。
また、事業承継を構成する要素として3つあります。
- 事業=経営権
- 財産=株式
- 資産
- 資金
- 無形財産=企業ブランド・ノウハウ
- 顧客情報や人脈・特許など
事業継承ではこのような3つの要素を丸々引き継ぐため、完了するまで5〜10年かかると言われてます。(中小企業庁調べ)
そのため、何かあってからでは遅く、問題が上がる前から早めに承継者を決めて育成をするなどの準備をする必要があるのです。
継承と承継の違い
一見同じ単語のような「継承」と「承継」ですが、意味にはどのような違いがあるのでしょうか。
それぞれの意味を調べると以下のようになります。
継承=先人の身分や財産、権利、義務などを受け継ぐこと。
承継=先人の地位や事業、精神などを受け継ぐこと。
継承は主に具体的な形のある物事を受け継ぐ際に使用されますが、一方で承継は経営理念や経営者の思いなど抽象的な物事を受け継ぐ時に使用されます。
よって、継承と承継の違いは受け継ぐものやタイミングの違いが主になります。
中小企業庁や法律用語などでは「承継」が使用されています。
しかし、どちらが正しいなどの明確な基準はないことや、違いについて特に大きな問題とされていないためどちらを使っても間違いではありません。
M&Aとは
M&AのMはMergers(企業や会社同士の合併と買収)という意味で、
AはAcquisitions(取得・買取)です。
直訳すると、合併と買取という意味になります。
別の言い方をすると、「事業譲渡」や「会社分割」などが挙げられます。
今回のテーマである事業承継とM&Aの繋がりや違いはなんでしょうか?
事業承継とM&Aの違いとは?
事業承継は事業を引き継ぐことに対して、M&Aは事業譲渡や合併を指します。
事業を引き継ぐための手法としてM&Aがあるため、M&Aは事業承継の一部ともいうことができるでしょう。
違いについて理解できたところで、事業承継型M&Aについての基本やメリットとデメリットについて解説いたします。
事業承継型M&Aの基本とメリット・デメリット
今までの日本では親族内承継が一般的でしたが、大学進学が当たり前になったことにより家業を継ぐという道ではなく、大手企業に就職するという若者が増えています。
そこで中小企業の後継者不足を打破するために事業承継型M&Aが増加しているという訳です。
メリット
– 後継者の選択肢や幅が増える
親族や従業員以外での事業承継として選択肢が増えることは経営課題を解決できる手法として大きなメリットになります。
– 従業員の雇用を維持する事ができる
後継者がいないため廃業となってしまうと従業員やその家族は路頭に迷う可能性があります。
また、失業した従業員の補償などの会社にかかる費用も、従業員が多ければ多いほど莫大になるため雇用を維持できることは売り手企業としてメリットになります。
実際、従業員の雇用維持のためにM&Aを利用する企業は年々多くなっています。
– 従業員のスキルが上がる可能性がある
経営者が変わることにより、事業拡大のために新たな施策や業務改善により従業員のスキルアップを期待できる可能性があります。
これは、経営者だけではなく元従業員のメリットになります。
– 利益を得ることができる
廃業するにしても、経営者にかかる費用負担はとても大きくなります。
そこで事業を承継してもらうことで、売却益を得ることができます。
– 取引先との契約を存続する事ができる
買い手企業との条件によりますが、一般的には従来の取引先と契約は存続する事ができます。
積み上げてきた信頼や実績を失わないのはメリットと言えるでしょう。
– 長年の技術やノウハウを受け継ぐ事ができる
経営者にとって自社の廃業は、できることなら避けたいことです。
廃業して商品や技術が失われるより、M&Aにより技術や企業ブランドを受け継ぐ事で、買い手企業にとっても売り手企業にとってもウィンウィンな取引ができるということです。
– 優秀な人材を採用できる可能性が上がる
優良な企業の傘下に入ることによって魅力的な福利厚生が増えたり、優秀な人材を採用することができ、会社を大きくする事ができる可能性があります。
買い手企業としてもグループ会社が増えることにより信頼が上がることが予想されます。
デメリット
– 希望する条件で買い手が見つからない可能性がある
買い手企業は第三者目線から見て今後伸びそうな事業かどうかを判断します。
そのため、利益を安定的に出せないと見なされると譲渡額が下がってしまったり、最悪の場合は買い手企業がみつからない可能性もゼロではありません。
よって、事業承継を考える前から準備期間として客観的に見て自社の状況を整える必要があります。
事業承継をする前から事業承継について考え行動する必要があります。
– 会社を第三者に譲渡することができるかどうか
経営者にとって地道に育ててきた会社はかけがえのない子供のような存在です。
M&Aによりメリットを考えたとしても、心理的に第三者に受け継ぐという事が難しい場合もあります。
M&Aには手順も多く、時間も長くかかることから今一度本当に事業承継としてM&Aを利用するかどうかを検討する必要があります。
– 承継が完了するのに時間を要する
買い手企業を探すことから、マッチングし、条件交渉のすり合わせを重ねて成立となるM&Aは思ったよりも時間と気力を要します。
また、成立したら終わりではなく始まりになるため、長い付き合いができるように最適な企業選びが重要になります。
– 従業員や取引先のモチベーション低下や離れてしまう可能性がある
従業員については福利厚生や業務改善によりモチベーションが上がるメリットがある一方で、今まで対応していなかった業務を任され社風の違いに対応できずモチベーションが低下してしまう可能性があります。
取引先においても取引条件の変更や待遇が変わってしまうなどの理由から最悪の場合、契約打ち切りになってしまうこともゼロではありません。
従業員や取引先については、M&Aが決まった段階で早くから伝えることで最悪の事態は免れる可能性が高いため報告は早めに実行しましょう。
高齢の経営者が引退しない3つの理由
高齢でも現役で経営をしている経営者はなぜ引退をしないのでしょうか?
後継者不足や育成不足以外の理由についてまとめました。
- 経営者が経営から退く意思がない
- トラブルを回避するため、後回しにしている
- 相談相手がいない
1.経営者が経営から退く意思がない
高齢でも元気に経営ができていることから、事業承継について全く考えていない経営者もいます。
体調に不調が出てから後継者を探すのでは遅いのですが、自身の経営で問題が出ていないことから第一線から退かずに現役で走り続けているという訳です。
病気や事故などで緊急事態により、何も準備をせずに急いで後継者を探すという事態を免れるためには元気なうちから後継者候補だけでも選定して育成をしていく必要があります。
2.相続トラブルを回避するため、後回しにしている
親族内承継や親族外承継などといった事業承継には相続トラブルがつきものになります。
誰を後継者にするかによって相続に関するトラブルに発展する可能性があります。
トラブル回避のために事業承継を後回しにする経営者は少なくないのが現状です。
3.相談相手がいない
事業承継について誰にでも話せる話題でないため、相談できる人がいないことも深刻な問題になります。
最近では話題になっており、かつ主流になっているM&Aですが昔ながらの経営者には理解されることも難しい場面も。
よって相談できる相手がいないため事業承継を引き伸ばして自身で経営を続けるという経営者もいます。
事業承継型M&Aをする主な理由
事業承継型M&Aについての基本やメリット、デメリットについて記載しましたが、まだあまりピンときていない方向けに事業承継を行うべき主な理由について説明いたします。
– 経営者の高齢化
中小企業の経営者高齢化は深刻な問題になっています。
中小企業庁によると全国の社長の年齢分布は年々70代以上の割合が増えており、合わせて40代以上の割合が減っています。
経営者が高齢化することによって病気や体力低下により、今まで通りに経営が回らなくなってしまったり、高齢になってから後継者を探すことになり、事業承継にさらに時間がかかってしまっています。
事業承継には時間がかかるということを念頭に置いて早め早めの行動を心がけることをおすすめします。
– 企業の価値を向上させる
経営者が変わることによって新たな視点や別の観点からの意見により、企業価値向上が期待できます。
自社の将来を考えて、企業の価値をあげるという観点から事業承継することも大切になります。
– 経営リスクの回避
経営者不在による、経営のリスクは多岐に渡ります。
例えば、会社の未来に関わる重要な決定ができない、従業員が誰についていったらいいか分からないなどが挙げられます。
事業承継型M&Aの実行によりそれらの課題が解決されるという理由があります。
事業承継の基本的な流れ
事業承継をスムーズに行うために、まずは事業承継計画の作成から始まります。
事業承継計画については以下の流れになります。
- 経営状況を把握する
- 承継方法と後継者を選定する
- 事業承継計画の作成
1.経営状況を把握する
ヒト・モノ・カネなどの会社の状況や経営者の資産、後継者候補をあげるなどのヒアリングを行います。
2.承継方法と後継者を選定する
次に、承継方法として親族内承継か親族外承継かM&Aかを選び、後継者を確定させます。
3.事業承継計画の作成
最後に1と2を元に事業承継計画を作成して事業承継計画が完了します。
3つの流れで事業承継計画を作成後、次の手順で事業承継を行います。
また、今回はM&Aでの事業承継についての基本的な流れを記載いたします。
- 買い手企業の選定
- 双方の条件交渉
- 従業員や取引先に報告
- 統合後のフォロー
一つずつ詳しく見ていきましょう。
1.買い手企業の選定
譲渡先の企業を選定します。
自分で調べて企業に直接交渉することも可能ですが、一般的にはM&Aの仲介業者やマッチングサービスを利用します。
M&Aアドバイザーなどの専門家に頼むのもいいでしょう。
2.双方の条件交渉
交渉企業が見つかったら売り手企業と買い手企業の双方に条件交渉をします。
取引成立後に気付くような事態を避けるためにも従業員の待遇や事業の売却価格について詳細をすり合わせます。
仲介業者に依頼すれば、交渉ごとが円滑に進みます。
3.従業員や取引先に報告
双方の条件交渉が終わると、従業員や取引先に合併をする旨を伝えます。
できる限り早めに通達することが後々のトラブルを防げますが、伝え方を誤ってしまうと信頼を失う可能性があるため慎重に行いましょう。
4.取引成立後のフォロー
M&Aは取引が成立したからといって終わりではなく、そこからスタートするものになります。
そのため、売却後も買い手企業に協力をして事業拡大に向けて歩み寄る必要があります。
事業承継できなかった場合
最悪の事態として事業承継ができなかった場合についていくつか起こりうるリスクをまとめました。
- 廃業するにあたり多額のコストがかかる
- 従業員が路頭に迷う
- ノウハウや自社サービスがなくなる
1.廃業するにあたり多額なコストがかかる
廃業にはかなりのコストがります。
会社清算するつもりで廃業という選択をとっても思いの外廃業コストがかさんでしまい手元に利益が残らないといった事象もあります。
2.従業員が路頭に迷う・取引先に迷惑をかけてしまう
廃業することにより従業員が雇用を失うため従業員とその家族が路頭に迷う可能性があります。
また、取引先においても廃業による打撃は免れません。
3.ノウハウや自社サービスがなくなる
廃業することにより自社サービスが消滅するため、後悔をする経営者も少なくありません。
企業は長く存続することに価値があります。まずは廃業をしない道を選択していきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は事業承継のためのM&Aについて解説しました。
一般的とされていた親族内承継から承継手法が変わっていく中でM&Aという方法もあると認識いただければ幸いです。
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初めてのM&Aに不安を感じる経営者の近くで伴走します。
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