2024.12.04
M&Aコラム
M&Aにおける第三者割当増資とは?メリットとデメリットを解説
M&Aにおける第三者割当増資とは?メリットとデメリットを解説
企業の成長や経営の安定に必要不可欠な資金調達。資金調達の方法には、金融機関からの借入のほか、助成金の活用やクラウドファンディング、第三者割当増資などが挙げられます。今回は、M&Aで利用される場合もある第三者割当増資について、また譲渡企業側のメリット、デメリットについてご紹介します。
■M&Aで利用される第三者割当増資
資金調達の手段には融資と増資があり、第三者割当増資は増資に当たります。この第三者割当増資ですが、資金調達の目的以外に、M&Aで利用されることがあります。
・第三者割当増資とは?
第三者割当増資とは、新たに発行した株式を株主以外の第三者に割り当てることです。一般的に第三者割当増資は、新規事業や設備投資など事業拡大のための資金調達手段として行われます。また、特定の他社との関係を強化したい時などにも用いられる手段です。上場企業のみならず、未上場企業が資金を調達するために第三者割当増資を利用する場合が多く見受けられます。
・M&Aにおける第三者割当増資の目的
M&Aにおける第三者割当増資では、譲渡企業が株式を発行して譲受企業がそれを引き受ける形になります。株式の割当先は法人・個人を問わないため、自社社員や親族など、企業と深い関わりがある人物に割り当てられる場合も。M&Aで第三者割当増資が利用される場合、事業提携や事業再生を目的として行われます。さらに、同意なき買収(敵対的買収)の対象となった企業が、買収されるのを防ぐために、友好的な関係にある企業に第三者割当増資を行うケースもあります。M&Aで第三者割当増資を用いる場合、買い手側である譲受企業は一部取得となります。そのため、第三者割当増資によるM&Aは、完全買収を希望する企業には向いていません。
■第三者割当増資のメリットは?
M&Aで第三者割当増資を利用した場合、売り手側である譲渡企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
・経営権を守ることができる
第三者割当増資は、新たに株式を発行して、株主を募集する公募増資と似ています。しかしながら、公募増資の割当先は不特定多数であるのに対し、第三者割当増資の割当先は、特定の第三者に限られているという点で異なります。第三者割当増資では、株式の割当先が親族や社員など譲渡企業と深い関わりがある人物であったり、取引先といった友好関係にある企業であったりするため、経営権が譲渡企業とまったく関係ない人物や企業に渡るリスクを避けることが可能です。
・返済義務がなく資金繰りが安定する
銀行から融資を受けた場合、返済の義務があります。しかし、第三者割当増資は譲受側による出資に当たるため、返済の義務はありません。担保を提供することも、利息が発生することもない第三者割当増資で、財務基盤を強化することができ、譲渡企業は事業再生を目指すことが可能に。また、 M&Aで第三者割当増資を用いた際には、資金増加で事業拡大を目指すことができます。買い手側である譲受企業が社会的に信頼性が高い企業であった場合、譲渡企業の信用力もアップします。中小企業の場合、資金調達や資金繰りが難しいこともあり、第三者割当増資はメリットがあると言えるでしょう。
■第三者割当増資のデメリットは?
メリットばかりに目が行きやすい第三者割当増資ですが、デメリットがない訳ではありません。ここでは、M&Aで第三者割当増資を利用した際の譲渡企業のデメリットについてご紹介します。
・発言力が弱まる
新株を特定の第三者に割り当てる第三者割当増資の場合、新株を発行する譲渡企業の発言力が弱まる可能性があります。これは、M&A後も引き続き経営に携わりたいと考えている経営者にとって考慮すべき点でしょう。完全買収には至らないまでも、持ち株の比率が低下すると、割当先の第三者の影響力のほうが大きくなります。そのため、M&A後も経営に参加するのであれば、第三者に割り当てる株の割合をよく検討しなければなりません。
・税負担が大きくなる可能性も
資本金が少ない企業の場合、第三者割当増資で資本金が増えると、税負担が大きくなるリスクがあります。基本的に資本金が1億円以下なら、法人税の軽減税率が適用されます。しかし、第三者割当増資で資本金が1億円を超えてしまった場合には、法人税の軽減税率が適用されず、納税額が大きくなる可能性が。そのため、第三者割当増資を利用する際には、税負担がどれくらいになるのかも考慮する必要があるでしょう。
※法人税の軽減税率の詳細や適用条件は変更されることがあります。最新の税制に基づいて確認することが推奨されます。
■まとめ
出資者を指定できない公募増資とは異なり、第三者割当増資では出資者を指定できる増資の方法です。第三者割当増資によるM&Aは、メリットもあればデメリットも。M&Aを実行する際には、企業が置かれている状況や目的に合わせて最善の手法を選ぶようにしましょう。