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2024.08.24

M&Aコラム

【M&A成功のコツ】出光興産と昭和シェルの経営統合から学べる事

2019年、3年越しの統合協議によって実現した出光興産と昭和シェルの経営統合。この経営統合によって、出光興産は石油元売り業界で第2位の地位を確立しました。企業文化が大きく異なることで有名な出光興産と昭和シェルですが、どのようにM&Aを成功させたのでしょうか？

■出光興産と昭和シェルのM&A

出光興産と昭和シェルのM&Aから成功のコツを学ぶ前に、まずは出光興産と昭和シェルが経営統合に至ったあらましを見ていきましょう。

・創業家の反対で頓挫？

最初に出光興産と昭和シェルの経営統合案が出たのは、2016年のこと。ところが、出光株を33.92％保有していた創業家が株主総会にて経営統合に反対し、すぐに合意を得ることはできませんでした。幾度もM&Aを繰り返して成長してきた昭和シェルに対し、出光興産にとっては初の経営統合だったため躊躇するのも当然のこと。また、出光興産の創業家は、お互いの取引先が敵対関係にあり、企業文化が大きく異なる企業同士の経営統合からは、シナジー効果が得られないと判断しました。

・株式交換による完全子会社化

創業家の反対に遭った経営陣側は、公募増資で一般投資家に株式を発行し、創業家の株主総会における影響力低下を図ります。こうして、出光株を約26％しか保有できなかった創業家は、株主総会での拒否権を失う結果に。経営統合に反対できなくなった創業家は、一定の条件と引き換えに、株式交換による昭和シェルの完全子会社化を受け入れることになりました。創業家の心配をよそに、出光興産と昭和シェルのM&Aは成功。物流の合理化のほか、地熱と風力に強い会社である出光興産と太陽光とバイオに強い昭和シェルが経営統合したことで、石油元売り業界だけではなく、再生可能エネルギー業界でも強い影響力を持つことになりました。

■M&Aを成功に導くためのヒント

出光興産と昭和シェルのM&A成功例から学べる点についてご紹介します。

・創業家を尊重する

混乱をもたらす創業家と経営陣の対立。M&Aという大きな決断を実行する際には、対立が生まれることを想定しなければならないでしょう。しかし、対立が生じたとはいえ、創業家をないがしろにするM&Aは成功しません。株主総会での創業家の影響力低下を図った出光興産でしたが、創業家が出した条件を呑み、対等合併ではあるものの昭和シェルを完全子会社化しました。このように創業家の意向を尊重することは、M&Aの成功に欠かせません。

・企業文化統合を疎かにしない

M&Aを成功に導くには、企業文化統合に真摯に取り組む必要があります。一般的に、濃い企業文化を持つ企業同士のM&Aを成功させるのは、容易なことではありません。偉大な創業者が打ち出した「大家族主義」を掲げる出光興産が、昭和シェルの従業員に同じ価値観を持つように強要すれば、調和がとれないのは火を見るよりも明らかです。他方の文化を押し付けるのではなく、共通の価値観を築き上げて浸透させることは、M&Aの成功に欠かせない要素だと言えるでしょう。

・柔軟性を培う

M&Aでさらなる企業の成長を目指すのであれば、柔軟でなければなりません。M&Aを決定した時点でこれから起こる変化を受け入れる覚悟をしたものの、次々と訪れる変化に柔軟に対応できなければ、M&Aを成功させることはできないでしょう。出光興産と昭和シェルの経営統合は、柔軟性が求められるものでした。結果的に、出身にとらわれない実力重視の人事が行われるようになったこと、社員とのコミュニケーションの場が設けられるようになったことなど、企業の成長促進に役立ついくつもの変化がもたらされました。