M&Aの契約内容にロックアップは必要？

2024.11.24

M&Aコラム

M&Aの契約内容にロックアップは必要？

金融業界において使用されるロックアップとM&Aのロックアップとでは、大きく意味が異なります。ロックアップは、M&Aを成功させるために欠かせないと考えられていますが、契約内容に必ずしも含めなければならないのでしょうか？

■M&Aのロックアップとは？

M&Aのロックアップとは、どのような意味なのでしょうか？ここでは、ロックアップの意味と目的、期間についてまとめてみました。

・最終的な契約に記載される

M&Aにおいて、最終的に締結する契約書に記載されるロックアップ。M&Aのロックアップはキーマン条項とも呼ばれており、譲渡企業の経営陣が取り決められた期間、引き続き企業に留まることを指します。譲渡企業と譲受企業が合意し、最終的に締結される契約書に記載されるロックアップですが、株式譲渡であれば株式譲渡契約書、事業譲渡であれば事業譲渡契約書に記載されます。

・M&Aにおけるロックアップの目的

M&Aが成立し経営陣は新しくなっても、従業員はそのまま留まることが多いでしょう。しかしながら、新体制のもと、不安な気持ちを抱える従業員は少なくないはずです。一刻も早く経営を安定させたい経営者にとって、従業員のモチベーションが下がった状態は好ましいものではありません。M&Aの最終契約書に記載されるロックアップは、M&Aの後も事業が滞りなく行われるように、企業の「キーマン」を引き継ぎのために残すことを目的としています。

・ロックアップの期間は？

旧経営陣のキーマンを残すことができるロックアップ。ロックアップが行われるのは、企業にとって経営者の影響力が大きい場合のほか、事業に多大な影響を与える人物が存在する場合です。企業に留まるキーマンは、従業員のモチベーションアップはもちろん、オペレーションの統合などを行います。しかし、キーマンはあくまでもサポートであるため、ロックアップの期間は限られています。ロックアップの期間は2～3年ほどが一般的ですが、企業の規模によってもロックアップの必要期間は変わり、1～5年までと様々です。万が一、キーマンがロックアップの期間よりも早く退職するようなことがあれば、契約違反となり損害賠償を請求される恐れがあります。

■ロックアップは契約内容に含めるべき？

業務の引き継ぎに欠かせないと考えられているロックアップですが、必ず契約内容に含めなければならないのでしょうか？

・ロックアップは義務ではない

M&A完了後、企業価値を低下させない目的で行われるロックアップ。しかし、M&Aの最終契約書に必ず含めなければならない訳ではありません。例えば、キーマン不在の企業であったり、キーマンが高齢・病気で業務の続行が難しかったり、キーマンと従業員との関係が悪かったりする場合などにおいては、ロックアップを設定する必要はありません。譲渡企業側からすれば、ロックアップが設定されると、拘束期間中はモチベーションの維持に苦労する場合もしばしば。キーマンのモチベーションが下がった状態では、思うような成果が得られないこともあります。

・アーンアウト条項とは？

譲渡した企業にそのまま留まって業務を行うことは、キーマンにとって容易いことではありません。そのため、ロックアップを設定する時には、アーンアウト条項も契約内容に含むケースが多く見られます。アーンアウト条項とは、M&A後のロックアップで業績が好調だった場合に、買収金額を増額する契約です。アーンアウト条項は、ロックアップで、一定期間企業に留まることになったキーマンのモチベーションを高めます。もしも業績が上がらなかった場合には、買収金額に影響することはありません。

■まとめ

ロックアップは、キーマンが抜けることによる企業価値の低下を防ぎ、M&A完了後も業務がスムーズに行われるようにするためのものです。ロックアップを設定するかどうかは、譲渡企業と譲受企業の話し合いによって決定されるもので、必ず契約内容に含めなければならないものではありません。ロックアップを設定する場合には、キーマンのモチベーションアップのためにも、アーンアウト条項を契約内容に含めると良いでしょう。