揺れる物流業界で買収合戦が勃発！M&Aの現状について

2024.10.25

M&Aコラム

揺れる物流業界で買収合戦が勃発！M&Aの現状について

経済活動の一翼を担う物流業界は今、働き方改革によって大きく変わりつつあります。今回は、物流業界を揺るがす2024年問題をはじめ、物流業界におけるM&Aの現状についてご紹介します。

■働き方改革？物流業界の2024年問題

1960年代に始まった高度経済成長期から、盛んになったと言われる物流業界。インターネット上での商取引が盛んに行われている現代、物流業界はなくてはならない業界です。ここでは、2024年問題を含めて、物流業界が抱えている課題について見ていきましょう。

・変わらざるを得ない物流業界

物流業界は、常に人手不足に悩まされています。ハードワークで知られる物流業界では女性が活躍することは少なく、労働時間と給料面での待遇の悪さが、人手不足に拍車をかけています。加えて、少子高齢化や宅配便取扱個数の増加も、物流業界に人手不足をもたらしていると言えるでしょう。建設業界や医療業界と同じく、労働環境の見直しを迫られた物流業界ですが、2019年から各業界にて順次施行されている「働き方改革関連法」により、2024年4月からドライバーの時間外労働時間の上限（年間960時間）が設定されました。この制限により、労働時間の改善は図られるものの、会社の利益減少やトラックドライバーの収入減少など、様々な問題が発生する可能性があります。物流業界が直面しているこれらの問題のことを、2024年問題と呼びます。

・M&Aが解決策になる理由

物流業界が直面している人手不足の問題には、物流システムの導入や採用の幅を広げるといった解決策が挙げられます。それ以外の解決策として、M&Aを検討している企業も増えているようです。市場規模の大きい物流業界ですが、トラック運送事業者の大部分が中小企業で占められています。今後、それらの中小企業が時間外労働の制限を守るためには、拠点を増やさなければなりません。しかしながら、ほとんどの中小企業がコスト的に拠点を増やすことが難しく、業界再編の動きが活発となっています。このようにM&Aを積極的に実施することにより、人材確保はもちろん、事業規模拡大や拠点拡大、顧客獲得による売上増加、労働環境の改善など多くのメリットが得られると期待できます。

■物流業界における買収合戦

物流業界では、2024年問題をきっかけに、M&Aによる業界再編が活発になっています。そんな中、物流業界大手の佐川急便を傘下に持つSGホールディングスが、同業であるC&Fロジホールディングスを株式公開買付買付け（TOB）し、買収する動きがありました。

・敵対的買収の始まり

C&Fロジホールディングスは、2015年に名糖運輸株式会社と株式会社ヒューテックノオリンが経営統合して誕生しました。2022年には、小売り業向け物流サービスに特化した物流事業を展開しているAZ‐COM丸和ホールディングスが、低温食品物流業界の大手となったC&Fロジホールディングスに対して事業提携を提案します。そもそも、C&Fロジホールディングスは設立以来、AZ‐COM丸和ホールディングスと良い関係を築いてきました。また、AZ‐COM丸和ホールディングスの社長は、C&Fロジホールディングスの大株主であるため、事業面で協業を促すのは道理にかなっていると言えるでしょう。しかし、 AZ‐COM丸和ホールディングスの提案に、C&Fロジホールディングスは、企業文化が異なるなどを理由に協業を拒否します。そのため、 AZ‐COM丸和ホールディングスは、 C&Fロジホールディングスに対して同意なき株式公開買付け（敵対的買収）を仕掛けました。

・待ったを掛けるGホールディングス

AZ‐COM丸和ホールディングスのこの動きに対して、複数の対抗提案が出され、C&Fロジホールディングスは意見を保留しています。 C&Fロジホールディングスを買収できれば、より一層の効率化を進めて、参入障壁が高い低温食品物流業界でさらなる成長を見込めるでしょう。さらに、 C&Fロジホールディングスは全国各地に物流センターを保有しているため、買収に成功すれば拠点拡大を狙えます。過熱の一途を辿るかのように見えたC&Fロジホールディングスをめぐる買収合戦ですが、友好的買収を進めるGホールディングスの参戦により、この買収合戦は終わりを迎えることになりそうです。