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2024.10.20

M&Aコラム

今後増加する?スタートアップと大企業のM&A

スタートアップが育ちにくいとされる日本において、現在政府は国を挙げてスタートアップ育成に力を注いでいます。スタートアップ企業が増えるにつれて、大企業とのM&Aが頻繁になり、オープンイノベーションの手段となる可能性も高くなるでしょう。今回は、これから増えると予想されるスタートアップと大企業のM&Aについてご紹介します。

 

■政府が後押しするスタートアップ育成

欧米の先進国に比べて、日本の開業率はそれほど高い水準ではありません。2022年時点の日本のスタートアップ企業の数は7470社で、数年前に比べて増加してはいるものの、まだまだ少ないと言えるでしょう。ここでは、日本政府のスタートアップ育成計画について見ていきましょう。

・スタートアップ育成計画とは?

日本政府は、2022年に新たな政策となる「スタートアップ育成5か年計画」を打ち出しました。この政策により、2022年から5年間でスタートアップ企業への投資額が10兆円規模に拡大されることになります。また将来的には、創業10年以内、時価総額10億ドルを超える非上場のユニコーン企業を100社、さらに2022年のスタートアップ企業数の約13倍となる、10万社ものスタートアップ企業の創出を目指しています。

・スタートアップ支援の目的は?

国がスタートアップ育成に注力する目的は、経済の活性化、雇用の創出、地域活性化などが挙げられます。産業競争力が低下している現在、スタートアップ企業を創出することで、国全体の産業競争力を高めていくことも目的の一つです。スタートアップ支援の中には、大企業との協業も含まれています。

 

■スタートアップと大企業のビジネスマッチング

日本政府は、大企業を軸としたスタートアップ育成を支援しています。2023年度にはスタートアップ支援施策として、経済産業省などが中心となり、税制や予算措置等の施策が講じられるようになりました。

・スタートアップと連携する大企業

新しいビジネスを創出するため、スタートアップと連携する大企業もあります。一般社団法人日本能率協会の調査では、2022年時点で、約4割の大企業がスタートアップと協業していることが明らかになりました。従来、スタートアップの新規発行株式のみ控除対象となっていましたが、2023年度からは「オープンイノベーション促進税制」が適用され、スタートアップの発行済株式を50%以上取得(買収)した場合にも控除対象になります。これにより、オープンイノベーションを目的とした、大企業とスタートアップの協業が今後一層盛んになると考えられます。

参考サイトURL:一般社団法人日本能率協会の調査

https://www.hrpro.co.jp/keiei/articles/news/3024

 

・ M&Aでのイグジットを狙うスタートアップ  

スタートアップは、イグジットによって利益を出すと、さらに新しい事業をスタートさせるか、そのまま買収先に貢献し続けるかを選択することになります。スタートアップのイグジット戦略にはバイアウトやIPO(新規株式公開)など、いくつかの方法がありますが、M&Aもその一つです。独自の技術力を持っている、安定したビジネスモデルがあるスタートアップのほか、すでに成長し切ったスタートアップなどは、大企業とのM&Aでイグジットを狙うことができるでしょう。実際、2023年にM&Aを行ったスタートアップ企業は、123件でした。スタートアップのイグジット戦略ではIPOが採用される場合が多いとはいえ、今後はM&Aによるイグジットも増えると予測されます。

 

■これからの大企業とスタートアップのM&A

大企業とスタートアップのM&Aが多いアメリカ。一方、政府が支援しているとはいえ、日本ではスタートアップとのM&Aに慎重な企業もまだまだ多いようです。また、スタートアップの中には、M&Aでのイグジットは企業価値が高くなりにくいと考える企業もあります。

・共に成長を目指す大企業とスタートアップ

日本において、大企業とスタートアップのM&Aが容易ではないのは、自前主義が強いからだと言われています。限られた自社リソースで新規事業を開始するのは難しいと認めていながら、なかなか自前主義から脱することができず、オープンイノベーションによる事業創出に乗り出せない大企業は少なくありません。そんな中、スタートアップと協業し、共に成長しながらM&Aを目指した稀有なケースがあります。

・江崎グリコとGREEN SPOONの事例

2024年6月、江崎グリコは全株式を取得することにより、GREEN SPOONを完全子会社化しました。2019年に創業したGREEN SPOONは、パーソナルスムージーを提供するサービスからミールキットを提供する宅食サービスを展開してきたスタートアップです。このM&Aによって、江崎グリコは健康・食品事業の強化を狙います。興味深いのは、江崎グリコがM&Aを前提として、スタートアップであるGREEN SPOONにマイノリティ出資を行った点にあります。成熟期を迎えたスタートアップを買収するのも一つの方法ですが、江崎グリコの事例にあるように、資本参加して大企業がスタートアップを成長させ、最終的にM&Aを行うのも良い結果を生み出す方法だと言えます。

 

■まとめ

大企業は、オープンイノベーションの手段として、スタートアップとM&Aを行うことができます。また、スタートアップ側は大企業とのM&Aを通して、イグジットを狙うことが可能です。現時点ではそれほど多くない大企業とスタートアップのM&Aですが、国の支援を得てスタートアップの数が増加するにつれ、これから増えていくと考えられるでしょう。

最後に

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