M&Aのクロージングとは？手法ごとの流れや手続きを解説

2024.10.05

M&Aコラム

M&Aのクロージングとは？手法ごとの流れや手続きを解説

M&Aのクロージングとは？手法ごとの流れや手続きを解説

M&Aにおいて、クロージングは重要なプロセスです。クロージング手続きに不備があった場合には、M&Aの成約が完了しない恐れがあります。そこで今回は、M&Aの流れや手法ごとのクロージング手続きをご紹介します。

■M&Aのクロージングについて

M&Aのクロージングとは、M&Aの成約を意味します。一般的にM&Aではクロージングを迎えるまでに半年から1年ほど掛かりますが、最終契約書に基づいてM&Aが実行され、経営権が移転すれば完了です。ここでは、M&Aのクロージングの流れについてまとめてみました。

・M&Aのクロージングまでの流れ

M&Aのクロージングでは、取引が法的に成立するための手続きを完了させなければなりません。そのためには、クロージング条件を履行する必要があります。基本合意書は法的拘束力を持たない契約であるのに対して、最終契約書は法的拘束力を持つ契約です。M&Aの手法ごとに最終契約書の名称は変わりますが、デューデリジェンスの後、譲渡側と譲受側の双方がクロージング条件に合意したタイミングで締結されます。

①M&Aの専門家に相談

②企業価値評価

③M&A先の選定・交渉

④トップ同士の面談

⑤買収条件の交渉

⑥基本合意の締結

⑦デューデリジェンスの実施

⑧最終契約書への調印

⑨クロージング

・クロージング条件とは？

M&Aのクロージングでは、クロージング条件を満たさなければなりません。クロージング条件とは、譲渡を実行する際の譲れない一定条件のことを指します。クロージング条件を決める時には、具体的かつ客観的に決める必要があり、主に下記のようなポイントが含まれます。

・表明・保証事項の記載が正確であること

・クロージング日までに前提条件を満たしていること

・業務上の許認可の取得が終了していること

・重要な取引先、役員などから同意を得ていること

・独占禁止法による届出が終了していること

・M&Aにおけるクロージングの期間は？

中小企業間のM&Aでは、最終契約書を締結してからクロージングまでに1カ月から半年ほど時間が掛かるのが一般的です。最終契約書は譲渡価格のほか、クロージング条件や表明保証、誓約事項など多くの事項から構成されているため、締結するまでには相応の時間が求められます。大企業のM&Aでは、クロージングまでの期間が中小企業の場合よりも長引く傾向にあります。

■M&Aの手法ごとのクロージングの流れ

M&Aの手法により、最終契約書の名称やクロージングの流れは変わります。ここでは、M&Aの主な手法である株式譲渡と事業譲渡のクロージングの流れを見てみましょう。

・株式譲渡の場合

株式譲渡では、譲渡企業から譲受企業への株式の譲渡が行われます。譲受企業が株式発行会社の場合には、クロージングにおいて株券の交付が含まれ、株主名簿の書き換えのための書類などの受け渡しが行われます。株式譲渡では、株式譲渡契約の締結日と成約日（クロージング日）は同じ日になる場合が多いようです。

・事業譲渡の場合

M&Aの手法の一つである事業譲渡は、すべての事業もしくは一部の事業が譲渡されます。株主総会の特別決議にて決議される事業譲渡は、事業譲渡契約が締結された後にクロージング手続きなどが履行されます。事業譲渡の場合、事業譲渡契約日に資産の譲渡や契約の移管などの手続きは終わらないので、成約日は異なります。

・M&Aのクロージング後に必要なこと

M&Aでクロージングしたら、ポストクロージングを行います。ポストクロージングでは、クロージングした後の誓約事項の実施や対価の調整などが行われます。ポストクロージングを円滑に実行するため、エスクローが利用されることも少なくありません。例えば、銀行口座を利用したエスクローでは、譲受企業が買収価格の一定割合をエスクロー用の銀行口座に入金しておき、契約の条件が認められた後に譲渡企業に買収額を渡すといった方法が用いられます。さらに、M&Aのクロージング後には、統合プロセスであるPMIで経営統合、業務統合、意識統合に取り組みましょう。そうすることで、M&Aを成功に導くことが可能になります。

■まとめ

M&Aでは、クロージング条件を満たさなければクロージングを行うことはできません。そのような場合、取り引きが完了しなかったり、クロージング条件を変更せざるを得なかったりするでしょう。ひと口にクロージングと言っても、株式譲渡と事業譲渡など、手法によって流れは異なります。M&Aではクロージングを迎えた後も対価の調整を行ったり、統合プロセスに取り組んだりする必要があります。